日本の会計基準における国債の取扱い

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銀行における資金運用

皆さんもご存じのとおり、銀行は、預金でお預かりした資金を、資金を必要とする個人や企業にお貸し出しし利鞘を得ることで利益を生み出しています。

そのため、銀行は、信用コストを勘案した総合的な収益性が預金金利を上回る貸出先を見つけることができない場合は、その資金を運用する必要があります。

運用手段には様々なものがありますが、預金という調達手段の特徴や自己資本比率規制が適用される銀行の特性からすれば、その中心は国債ということになります。

日本の会計基準

企業が資産や負債を保有する際は、その資産や負債が財務会計でどのように取り扱われるかが、投資判断を行う上の非常に重要なファクターになります。

財務会計は、様々な特性を持った企業に適用され、様々な利害関係者に会社の財務状況に関する情報を提供する目的を持った非常に複雑なシステムです。

そのため、それぞれの資産や負債に対して財務会計上の取扱いが一意に定まるわけではなく、保有の目的や資産・負債の性質により異なることもあります。

日本の会計基準は、「一般に公正妥当と認められた会計原則(J-GAAP)」と呼ばれ、企業会計基準委員会という組織によって定められています。

ちなみに、GAAPは「Generally Accepted Accounting Principles」の頭文字を取ったもので、一般に「ギャップ」や「ギャープ」と読まれます。

J-GAAPにおける国債の取扱い

J-GAAPでは、国債は有価証券の一種として、企業の保有意図により次の3つに分類されます(正確には、「責任準備金対応債券」という分類もありますが、保険会社のみに適用されますのでここでは除きます)。

  • 売買目的有価証券
  • 満期保有目的の債券
  • その他有価証券

このうち、どれに分類されるかで会計上の取扱いが大きく変わります。

売買有価証券

企業が国債を短期で売買する目的で保有した場合、その国債は「売買目的有価証券」に分類されます。

売買目的有価証券に分類された国債は、貸借対照表(B/S)で市場価格により評価され、市場価格の変動が損益計算書(P/L)上、収益や費用として認識されます。

これは、短期間のうちに国債を売買し、それによって利益を得ようとする場合は、決算時に売却した場合に得ることができる金額で評価するのが適切と考えられるためです。

満期保有目的の債券

一方、企業が債券を満期まで保有することを意図している場合、その国債は「満期保有目的の債券」に分類されます。

満期保有目的の債券は、「満保(まんぽ)」と省略されることもあります。

満期保有目的の債券に分類された国債は、購入価格をベースに、償還金額と購入価格の差額を時間の経過とともに償却する方法(償却原価法)で評価されます。

これは、満期まで保有される国債は、償還時に予め定められた償還金額(額面)で償還されるため、市場価格で評価する必要がなく、時間の経過により一定の金利により増加する金額で評価するのが適切と考えられるためです。

なお、満期保有目的の債券に分類された国債は、原則的に、他の分類に変更することができません。

その他有価証券

「売買目的有価証券」、「満期保有目的の債券」のいずれにも当てはまらない国債は、「その他有価証券」に分類されます。

その他有価証券は、「その他有証」と省略されることもあります。

その他有価証券に分類された国債の取扱いは複雑です。

B/S上は、売買目的有価証券と同様に市場価格で評価されます。

ただし、P/L上は、満期保有債券と同様に、償却原価法による評価額の変動額に利子を加えた額が収益と見做されます。

そして、B/S上の評価とP/L上の評価の差額は、B/S上の純資産の部にP/Lを通らずに直接計上されます。これを「純資産直入法」と呼びます。

まとめ

これまで、J-GAAPにおける国債の取扱い方法について、解説してきました。

次回は、こうした会計上の取扱い方法が銀行の投資行動に与える影響について解説いたします。

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